DESIGNEAST 02 レポート 名村造船所跡地にて
12:29 // 0 コメント // soap // Category: イベント , 注目記事 //DESIGNEAST 02というデザインのイベントが、9月の23~25に大阪の名村造船所跡地で開催された。
既に二ヶ月がすぎてしまったけれど、とても興味深い内容だったのでぜひご紹介しておきたい。
イベントの詳細は公式ページで。
DESIGNEAST 02 周縁と中心
公式ページにはこうある。
“大阪に、国際水準のデザインが生まれる状況をデザインする—。”
野心的な言葉だ。関わる人たちの熱量の高さが感じられ、自ずと期待も膨らむ。
ゲストのページで紹介されている顔ぶれを眺めても門外漢の僕には正直どれほどの人たちなのか分からないのだけれど、トークセッションに名を連ねるスプツニ子さんや、最近テレビでも引っ張りだこのコミュニティデザイナー山崎亮氏などの名前が気になった。
諸般の事情により(便利だ。)今回は、主催された実行委員会の方々のインタビューは叶わなかった。全体を見てまわるだけの取材になったがそれでも充実ぶりは感じ取れた。というかとても楽しかった。会場で感じた印象を写真中心に簡潔にお伝えする。
会場になった名村造船所跡地(Creative Center Osaka)は地下鉄北加賀屋駅から歩いて十数分のベイエリアにある。名前の特異さもあって気になりながらなかなか行く機会がなかった。やっとご対面だ。
どんな場所かは名村造船所跡地 (CCO)公式ページを。
因みに、今回のイベント会場になった建物の隣に、STUDIO PARTITAという別棟があり、そちらでは頻繁にクラブイベントなどが行われている。名村造船所跡地という名前は夜遊び好き音楽好きにはそちらの方でよく知られているのかもしれない。
会場になった建物の4階から |
DESIGNEAST 02 は四階建ての建物全体が会場になっている。
会場の各所に若いボランティアスタッフの人たちが待機していた。目が合うと笑顔が返ってきて、なにか尋ねたい気にさせられた。スタッフ全体から自発的な熱意が感じられてとても好ましい。そういうところにもこのイベントの性格が現れているのかもしれない。
2Fでは家具を作るワークショップ。
たくさんの作業スペースが整然と用意されていた。 |
説明不要で流れがわかる。わかるとやる気になる。さすがデザインのイベント。 |
世界のデザイナーから提供された家具の図面が壁に並んでいる。好きな図面を選んで買って→ |
→材料も買って→作る。慣れない女性一人の場合には男性スタッフのサポートもあった。あっという間に大盛況。 |
ここでも女性のほうが積極的。いや、ここでもというのは以前「おおさか☆めっけ」で紹介した「SAi TON 萬福 DAY」というイベントで見かけた女性たちを思い出したから。そこでは「自分で漕ぐエコかき氷機」なるものが備えられ、衆人環視の中躊躇なくそれに跨る女性たちの姿が頼もしくてかわいくて大ウケした。
このワークショップでもなれない手つきながら楽しげに鋸を握るのは断然女性のほうが多かった。いいぞ大阪女。
3Fでは、トークセッション
1日2回、3日で6回のトークセッションが行われた。我々が見学させていただいた回は立ち見もでる盛況だった。それが6回。たいへんな関心の高さだ。
TALK05 NOSIGNER× 谷尻誠 [SUPPOSE建築設計事務所] × 服部滋樹[graf] ファシリテーター:加藤孝司 / 多田智美、原田祐馬 [DESIGNEAST実行委員会 |
じっと座って話を聞くというのが苦手なこともあり途中で退席したので、白熱のトークセッションの内容に関してはお伝えできない。申し訳ない。
4F EXHIBITION edition HORIZONTAL(E&Y)
4階では広い空間をいかして、作品が展示されていた。
柱なしで屋根を支えるための入り組んだ構造がおもしろい。 |
yours / Yosuke Hayashi |
third / Max Lamb |
blue / Mihoko Mori 布の表情を変えながら丁寧に解説してくれた。staffの青柳さんありがとう。 |
広大な倉庫のようなスペースに、長く白い紙を敷くだけで魅力的な展示空間になっていることがおもしろかった。
各作品にごく間近に触れることができ、必要ならスタッフに(しかも妙齢の美女)声をかけ作品について質問したり話したりもできる。デザインの文脈に馴染んでいなくても、こんな展示の仕方なら誰もが楽しめる。たいへん気に入った。
昼間の雰囲気もいいのだが、写真を撮るにはもう少し外が暗くなってからが面白いんじゃないかと、時間をおいてもう一度来ることにした。
walden / Gen Suzuki in the sky / Koichi Futatsumata third / Max Lamb yours / Yosuke Hayashi blue / Mihoko Mori short by short / Hironobu Yamabe
2F shop
吉行良平と仕事
デザインってこういうことか、とちょっと考えさせられて、ちょっと分かった気になるようなモノが並んでいた。
制作者の吉行さんご本人がおられて、デザインの意図を説明していただけた。吉行さん話すのうまい。一つ一つにみなおもしろい背景があって聞いているのが楽しかった。
薄い木の板でできたうちわ。 |
「いろんな形を試行錯誤して結局扇風機の羽の形にたどり着いたんです。」と吉行さん。 |
コーヒー豆の出がらしを固めて作った灰皿。吸殻の臭いも消えるらしい。洗ったら崩れそうな気がしたが、平気だそうだ。 |
積み重ねてもグラグラしないよう高さを変えた椅子。 |
この本がおもしろいのよ。 |
こうなってね |
こうなるの! |
ね、おもしろでしょ。 はい、すごくおもしろいです。 |
Sina
Sina のバッグ。この刺繍は自分にまったくないセンス。が、じわじわくる。 |
HK HONEY
ロウソクねと素通りしそうだが、香港の街中で飼育する蜂が街中で集めた蜜から出来ている。油断できない(笑)。 |
柳々堂 / JoBu / 吉行良平と仕事 / DESIGNEAST selection (AOM / edition HORIZONTAL(E&Y)/ 大原大次郎 / 上出長右衛門窯 x ハイメ・アジョン Produced by 丸若屋 / Sina / HK HONEY / NINPほか)
【Brick Oven.】by 堀田裕介 × GLAN FABRIQUE cafe百花moka
わざわざレンガを運びこんで、本格的な石窯焼きピザが楽しめる。すごくおいしかった。ビールもうまかった。胃袋もデザインだ。
現場で捏ねて |
煉瓦積み石窯で焼いて |
お好みでその場に生えてるバジルをのせて |
食べる。おいしくないわけがない。 |
MARCHE
grafによるマルシェ・Fantastic Marketより16店舗が出店
パソナチャレンジファーム / SOAP HEADS / Vegemerry / ビオ・マルシェ / カラマノリオリーブオイル / cafe アルワーン / カラマノリオリーブオイル / ホッピー商店 / 堀内農園 / 針江のんきい~ファーム / ガトー・ファヴォリ / ムカイ林檎店 / ダイヤ印 / ちせ / the teaches / masal's soil maker / graf grocery shop
BAR
このバーの構成要素は実にシンプル。吊るされた布とプロジェクター。 |
発泡ウレタンをカットしただけのカウンター。 |
客のざわめき。 |
そして酒。 ええ、飲みました。 |
EXHIBITION (TWILIGHT)
暗くなる直前にもう一度4FのEXHIBITIONを覗いてみた。
それぞれの作品が昼間とは違う姿を見せている。特に「 blue 」と名付けられた一枚の布が複雑に重なり合って見せる深みのある透明感は、昼間には感じられなかった表情だ。一本の白い道でつながっていたはずの各作品は、それぞれ独立しつつ直線上に並び、少し離れて見ると行き先を誘導する灯りの連なりのように見えた。
関西では初めての試みなのだとその意義を話してくださった、E&Yの玉田さん。 |
最後に
とても楽しい時間を過ごさせていただいた。
もし許されるなら次回は事前にお願いをして、実行委員の方のお話を伺いたいと思った。
聞いてみたいのは「大阪に、国際水準のデザインが生まれる状況をデザインする。」というとても野心的で胸踊る目標が、達成されたとするのに必要なのは何か、だ。
このイベント(活動)が大阪の状況を刺激し、熱を生み出して続けていることは間違いないが、さらにたどり着くべき目的地の像がくっきりすれば、参加することに新たな意味が加わる。デザインの今について学び、楽しみ、触発されるというだけでなく、大阪の状況を変えるという大きな物語の一場面に居合わせているということにもなる。そうであればデザインの世界の門外漢にとっても一層スリリングな体験になると思うのだ。
取材・写真・文 斉藤五十八 サポート・写真 山下愛