これぞ、ハンバーガー。THE PANHEAD'S HEAVEN SALOON
17:56 // 2 コメント // MEKKEkun // Category: 飲食 , 注目記事 //マクドナルド、モスバーガー、ロッテリア、ファーストキッチン、フレッシュネスバーガー……。
みなさん、ハンバーガー、食べてます?
時間が無くても大丈夫。なにせ、ハンバーガーは、ファーストフードの代名詞。注文すれば、すぐ出てきて、ぱっと食べれる手軽さ。それでいて、そこそこ美味いんだから言う事無し。あと、安いし。
ところが、そんなハンバーガーの一般イメージを覆すようなハンバーガーが、大阪・九条にある。
「THE PANHEAD'S HEAVEN SALOON」。
まずは実食してきたハンバーガーの勇姿をご覧いただこう。
どーん。そして、こちらが新製品の「チーズBomb・special」。
お皿の上にそそり立つハンバーガーの圧倒的な存在感に、畏敬の念さえ抱いてしまう。そして、注文してから出てくるまで、待つこと約30分。老舗の鰻屋で注文したうな重が出てくるを待つに匹敵する時間だ。もはやファーストフードでもなんでもない食べ物らしき物体が目の前に立っている。
「THE PANHEAD'S HEAVEN SALOON」のオーナー、後藤 新一郎さんに話を伺った。
後藤「待たせてしまうことには本当に申し訳なく思っているんです。時間の無いお客さんもいるでしょうから、注文を受けた時は、時間がかかりますけどいいですかと、一応聞くことにしているんですけど…」
30分という時間は、美味いハンバーガーを作るために必要な時間。しかし、ファーストフードだという頭で出来上がりを待っていると、とてつもなく長い時間に思える。「一体、中では何が行われているんですか?」
厨房の中を見せて欲しい という私たちの申し出に、オーナーは快く応じてくれた。
この記事を読んで、実際の厨房の作業をイメージしてもらえれば、納得いただけると思う。
30分なんてあっという間に感じてもらえるかもしれない。
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注文を受けてから、ミートパテ作りに取りかかる。
あらかじめ作って冷凍しておくような器用な事はできない。
ボウルにつなぎの卵を落とし、淡路産の生タマネギのみじん切りを入れて、岩塩系の粒塩と荒挽きのブラックペッパーを少々。肉汁を閉じ込めるためのパン粉(自家製)を入れた後、オールスパイスとガーリックを加え…赤身90%のアメリカンビーフを、ドカッと景気よく投入して、混ぜ込む、混ぜ込む、混ぜ込む。そしてワシっと丸めるミートの塊。ご覧のように、掌いっぱい。
後藤「量は…、5inchバーガーでだいだい300グラム超、チーズBombで200グラム超でしょうか。お客さんの風体を見て加減したりもしますから、大体そんな感じ。チーズBombが少ないように見えて、このパテの中にさらにコルビージャックチーズを入れてしまうので、このくらいで丁度いいんです。コルビージャックチーズ?アメリカではポピュラーなんですが、チェダーチーズと…なんやったかな、とにかくジャンクなチーズですわ(笑)」
下の写真がコルビージャックチーズ。手の中のミートパテは、5inchバーガーよりは小ぶりだが、それにしても、普通にイメージするバーガーのパテの大きさではない。
この肉の塊を鉄板の上に乗せてしっかり焼く。といってもすぐに焼ける訳でもないので、その間にパンズを切る。
このバンズ、自家製。奥さんが毎朝お店で焼いている。(取材中、パンだけを買いにやってきたお客さんもいました)
後藤「パン業者で作るパンズも試してみたんやけど、どれもパワーがないというか…。ミートが大きいだけに肉汁も出でてくる、ソースも濃いしタップリでしょ、汁を吸って最後にはパンズの存在が消えてしまうんです。この自家製のバンズ、良い意味で耐水性があるんです。パンの腰がしっかりしてるから受け皿として残ってくれるし、食感として歯ごたえもある。」
5inchバーガーのバンズはケシの実を使ったカイザーロール。一方のボムで使うのは全粒粉の香り高いグラハムパン。ナイフでザックリと切ったら、鉄板の上に。カイザーロールはじっくりと、全粒粉グラハムパンはすぐ焼けるので、ある程度の焼き色が付いたら保温のためにオープンへ。
鉄板の左下にある小さなソースパンの中では、ハンバーガーの味付けのキモとなるソースがグツグツといい匂いをさせている。
後藤「淡路産タマネギとガーリックを肉から出てくる肉汁と赤ワインを合わせてソテーして作るんです。チーズ・ボムに使うのは、裏ごししたアボガドとクラシックアルフレッドのイタリアンクリームチーズソース。プラックペパーとガーリックと白ワインで味を整えて、でも、すぐ焦げてしまうのでマメに混ぜてやらんといかんのです」
途中、付け合わせのオニオンリングをフライヤーに放り込む。こちらは市販品だが、アメリカで食べ慣れている味であるビアバッターのオニオンリングを使用。ビールを使った衣でコーティングされているから、サクサクした食感になるというのも冷凍食品の利点かも。そうこうしてる内に肉が焼けてくるので、ひっくり返してもう片面を焼く。ワインを使って蒸し焼きにする。トッピングにする卵を焼く。ベーコンも焼いてゆくと鉄板の上は食材たちで大賑わい。チーズ・ボムだと、一度に4個作るのが限界だとか。
鉄串を肉に差し込み、串の先を手で触って肉の焼け具合を確認。(チーズ・ボムは肉に刺した穴からチーズが浸み出てくるのが目安。時間は少し余分に必要だ)
チェダーチーズを2枚、45度ずらして載せてフタを閉じる。30秒程でフタを開けると、溶けたチーズが肉全体を包んでいる。
焼きは完了、最終トッピングだ。
カリッと焼けたパンズ上にレタス、そして出来たてのミートパテ、タマネギとガーリックをソテーしたものの上に先程のソースをたっぷりと。ベーコン4枚と半熟目玉焼きを乗せ、中央に竹串をぐさり。その上にトマトとオニオン、ピクルスを積み上げ、さらにソース。パンズでフタをして5インチ・バーガーの完成。
お次は、チーズ・ボム。
チーズ・ボムは、同様にレタスを敷いたパンズに丸々としたミートパテを乗っける。輪切りのオニオンソテーまるごとひとつ乗せて1回目のソース投入。2枚の長いベーコンでミート全体をカバー、型抜きの目玉焼きを積んで竹串を刺す。
さらにトマトを重ねた上から再びソースをドロリ。垂れ流れるほどまで、これでもかという位に掛けて、トッピング完了。
アボカドチーズソースのきれいな緑が食欲をそそる。
…というような行程があっての30分。
すさまじいボリュームのハンバーガーが2個。テーブルの上にトーテムポールの如く屹立している。実食の前に実測してみると、5inchバーガーで16センチ。5インチ = 12.7センチを超えてしまっている。
「ご自由に食べてくださいね」と、ニコやかにマスターは言うが…。
後藤「本来の食べ方でいくなら、ギュ~っと上から潰せるだけ潰すんです。中からソースやらなんやら出てきてもかまわず潰して、両手で持ってかぶりつくのがいいんです。それで、グラスにストローを差しておいて、飲みたくなったら口でストローを迎えにいって飲むと。両手、離せませんしね。でも、以前に一度、アゴを外されたお客さんがいましてね。それからはね、ご自由にと。ナイフとかもありますけど…」
申し出を断り、お薦めの食べ方で挑戦してみる。
手で押さえ込んでゆくと、半熟卵の黄身が潰れ、ソースがハミ出してボタボタとお皿の上のオニオンリングに滴り落ちる。そこまで潰しても、やはり一口で全体を頬張ることは不可能だ。
サクサクとした歯ごたえのパンズを楽しみ、トマト・レタス・タマネギの感触を楽しんだ後、いよいよやってくるミーティな肉感。しっかり焼けていても、この肉のボリュームならでわの肉汁。この厚みがあるからこその温かさ。口いっぱいの美味さ。当然のごとく、口の囲りと鼻の頭はソースでべっちょりだ。なりふり構わず、かじりつく。一生懸命に食べる。咀嚼する。味わう。むさぼる。そして、完食。半端ない達成感。征服感。このハンバーガーを食べるのは、スポーツに近い?
後藤「アメリカのハンバーガーはね、結構赤いんですよ。レアな感じ。最初の頃、それでいったら、生焼けやんとか言われてしまいましてね、うーんて考えて。生のタマネギを刻んで練り込んでおいて蒸し焼きにすることにしたんです。焼いている間に中のタマネギが煮えまして、最終的に外側は焼けて内側はしっとりしたミートパテにすることができたんです。」
後藤「ハンバーガーってご馳走というような気張ったもんやないけど、食べるとなんやら幸せな感じになれるでしょ。なんかこう祝祭的なボリュームの大きさが欲しかったんで、混ぜ物無しのアメリカンビーフ100%。和牛になるとサシというか脂が多いでしょ。だから焼くと縮むんです。赤身なら焼いてもそんなに縮まない。大きいままです。とにかくデカいハンバーガーにしたかったんです。」
オーナーの後藤さんは、大阪芸大の写真学科を卒業後、渡米してニューヨーク・ブルックリンのアートスクールへ。「アメリカの水が性に合ったんでしょう」レストランや 寿司屋の店員、スクールバスの運転手をするなどして15年をアメリカで暮らしていたが、ご実家の事情で日本に帰ることになるのだが、それはまた別の話。そ の間に食べたアメリカ国民食=ハンバーガーの数や…。後藤「アメリカでは、大体どんなダイナー・レストランにもハンバーガーがあるんです。高級ステーキハウスに行っても必ず。ステーキにする肉をわざわざ挽いてハンバーガーにするんです。下町の肉屋が自分の所で出た枝肉をひき肉にして作るバーガーなんていうのも、絶妙に美味い。巨漢の警官が巡回中にダイナーに立ち寄って、でっかいハンバーガーをカブリついてたりするのが普通の風景やし。
マスプロダクツ系のバーガーならウェンディーズ。レギュラーを注文して、"self-fixing bar" で、レタスやオニオンをどんどん乗せて、ホースラディッシュをかけてケチャップつけて…もう、最高やったねぇ。
とにかく、ハンバーガーが好きやったですわ。日本に戻って店を始めるにしても、基本的に自分が好きなことしかできへんし、ハンバーガーしかないと。ホットドッグ、クラムチャウダー、タコライス、ビーフステーキプレート、ロコモコ…。完全にアメリカンダイナー系。アメリカで食べ歩いた時の記憶とかで作ってしまう、もろに男の料理ですわ。ぶっちゃけ、小技が効いた料理とかではない。その代わり、ガッチリと味があって、ガッツりと腹がふくれる。」
1961年のデュオグライドと1964年のエンジンのカスタム・チョッパー。店内に2台のハーレーが鎮座する、まさにアメリカンな内装の「THE PANHEAD'S HEAVEN SALOON」。週末ともなると、バイク乗り達がやってきて、バーガーを食べてゆくと言う。
後藤「なんでかオートバイ乗りはバーガー好きですわ。ハーレー乗りは、特に。バイクに乗ると、かなり体力を消耗しますから。5周年の時にパーティーをしたんです。常連さんがたくさん来てくれて飲み食いしてくれたんですけど、人数の割に店の中が狭く感じましてね。気づいたんです。お客さん、満遍なくデブ(笑)。体格がええんですわ。そんなお客さんに満足してもらいたいしね。20人のパーティなら30人前くらい作って、もしも食べ残したら持って帰ってもらう位のもんにしてます。まぁ、儲かりませんけどね。」
店のコンセプトは、ハイカロリー&ハイコレステロール。食べた後に後悔するくらいの量で、次の日、体重計に乗った時に、「あぁ、昨日バンヘッド行ったんやった」なんて思い出してもらえるような店にしたいと、冗談のように言うオーナー。
後藤「思うんですわ。満腹感というのは、何にも勝る幸福感やないかと。上品さとは程遠いんやけど、人間が生きるっていうことと直結しているのが満腹感。しっかり食べることができたら、それだけで大丈夫。がんばって食べて、食べたらしっかり運動してねって気持ち。美味しかったと言われるより、満腹ですって言われる方が嬉しいかもしれません。でも、まあ、でっかいハンバーガーが出てきたら、それだけで楽しいでしょ?」
「5inchバーガー・special」 と「チーズBomb・special」 、共に1200円。30分待つ価値あり。
あぁ、ほんとうに満腹。ご馳走様でした。
文 福田浩一
撮影 今西一寿
THE PANHEAD'S HEAVEN SALOON
大阪市西区九条1-13-3
TEL 06-6582-1981
営業時間:AM10:00~PM10:00
定休日:月曜日、第1・3日曜日
けんけんのしっぽ
2011年6月10日 1:27
ほんまかなりヘビーですよ(^。^;) おなかすかせて是非とも行ってくださ~い(^-^) 絶対期待を裏切りませんよ 他にも美味しいもん沢山あります
kuu
2011年6月14日 13:36
よーし、い、いくぞーーーー!